3か所の歯科で抜歯してインプラントしかないと言われた歯を保存した8年経過症例です。
「3か所の歯科を回ったが、どこでも抜歯してインプラントと言われてしまった。30分くらい個室に閉じ込められて強い口調で脅された歯医者もあって怖い思いをした。」と初診時に訴えられていました。
47の歯肉の腫脹と動揺1度を認め、打診痛にも反応がありました。デンタルレントゲン画像より根管治療に問題があり、根尖部に透過像を認めました。
前職での治療のため記録があいまいなのですが、縁上の健全歯質がほとんどなく、加えてクリアランスが厳しく、歯冠補綴するうえで障壁になりそうでした。根管に破折などはなく、通常通りの根管治療を施術できました。保険内のFMCで歯冠修復して様子を見ることとしました。
8年経過したときに「右下奥歯が噛むと痛い。歯が動いている感じがする。」と連絡が入りました。「抜歯と言われ続けた歯が8年もったんだから十分でしょう。」と私自身もあきらめの気持ちで診察しました。ところが歯肉の状態が良く、デンタルレントゲン上においても良好に経過しているように見えます。
FMCが除去中に脱離しました。クラウン内面のセメントがウォッシュアウトしていたことから、すでに脱落していたようです。クラウンが咬合時に動くため、疼痛を感じていたと推測しました。クラウンが原因かどうか判断するため、この状態で経過を見ることとしました。
約3週間後の診察時に疼痛の消失を確認しました。このまま歯冠修復できると判断したため、ダイレクトクラウンをインジェクションモールディングにて直接成形して終了しました。ダイレクトクラウンはクリアランスや残存歯質に影響されにくく、脱落の心配もありません。このまま一生自分の歯を使えることを期待しています。
8年前の抜歯判定の理由はクリアランス不足と推測しています。要するにクラウンを作るのが難しそうだから抜歯しましょうってことです。これっておかしくないですか。8年前には結構無理して形成してセットしましたが、今だとダイレクトクラウンで簡単に歯冠修復できます。
「技工でクラウンを作れないから抜歯」ではなく、
クラウンを作れないなら、なんで作れないのか考えましょう。
そこが現代の歯科医療のボトルネックです。
学会などが出しているガイドラインに従うだけならAIにでもなんでも診断できます。そこを超越できるのが人間の考える力だと信じています。
・注意事項
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