麻酔アレルギー患者さんへのダイレクトブリッジ

局所麻酔アレルギーの患者さんにダイレクトブリッジを即日で装着した2年後の経過観察です。


 局所麻酔アレルギーのため一般的な補綴治療が困難な患者さんです。右上2番は全身麻酔で抜歯されたそうです。インプラントも隣在歯を形成するブリッジも麻酔が必須であり、治療のたびに全身麻酔下で施術するのは現実的ではありません。ダイレクトブリッジでの治療を希望され、ワタベデンタルに来院されました。

 

 全顎的にトゥースウェアが著しく進行しており、ハードブラキサーであることが容易に想像できます。ダイレクトブリッジは力に弱く、本症例のように歯ぎしりが著しく強い患者さんには原則として適応しません。容易に脱離してトラブルになる可能性が高いためです。

 

 しかし、ここで私が断ったら、患者さんは行き場を失います。全身麻酔で治療することは現実的ではありません。欠損の放置は審美面および発音等の機能面に多大な影響を被ります。

 


 即日でダイレクトブリッジを装着しました。写真上では彩度が強調されるため、かなり白く見えますが、実際の口腔内では適合しております。反対側の左上2番が唇側転移しており、同じようにダイレクトブリッジを唇側に位置させると、下顎切歯と干渉してしまいます。そこで錯覚を使いました。明度を上げて、まるで唇側に出ているように視覚的エフェクトを付与しました。切歯面観の写真を見れば、ダイレクトブリッジが唇側に位置していないことがわかります。

 

 本症例は、本来ならダイレクトブリッジの適応外です。力に問題があるため、早期の脱落リスクが極めて高いからです。しかし、ダイレクトブリッジのメリットとデメリットを勘案し、有用性が高いと判断したため、リスク承知で施術しました。早期に脱離してしまうことを十分に説明し、理解・納得してもらえたことが決定を後押ししました。患者さんの覚悟が非常に重要になります。

「でも大丈夫ですよね」「お任せします」など、リスクを受け入れる覚悟がない方や、

一方的な会話で思い込みが激しい方だったら、間違いなく施術を断ったでしょう。

トラブルが出た際に「取れることは聞いていたが、まさかこんなに早くとれると思ってなかった。信頼して任せていたのに、どうしてくれるんだ!」ということになりかねません。保存治療は、その性質上どうしても一定のトラブルが生じます。患者さんのリスクを受け入れる覚悟が適応を左右します。

 


 約2年経過したときに脱離の連絡がありました。箸を間違えてガリっと噛んでしまい、取れてしまったそうです。私の想定では半年程度で取れてくることを覚悟していたので、十分もったと思っております。

ダイレクトブリッジは大体3年くらいで脱落する方が多いです。ボンディングが劣化して接着強度が落ちるためです。

 


 当日に再接着して終了です。「違和感がなく、ほとんど意識していなかったから、噛んでしまった」と話していただけました。多くの患者さんが、取れるまでダイレクトブリッジの存在を忘れています。ダイレクトブリッジは隣の歯や骨などに大きく手をかけない分、違和感が少ないのかもしれません。

本症例のように、特別な事情で一般的な治療が難しい方にも、ダイレクトブリッジは適応できる可能性があります。

 

・注意事項

症例写真は患者様の了解を得たうえで掲載しております。

無断複写・転載は一切認めておりません。